臨床心理士/公認心理師について
臨床心理士とは
臨床心理士とは、文部科学省管轄の財団法人臨床心理士資格認定協会が発行する心理技術者の資格です。1988年に日本臨床心理士資格認定協会が発足したことにより、その年の12月に初の臨床心理士が誕生しました。日本のカウンセラーや心理系の資格で欧米のClinical Psychologistにもっとも近いものです。Clinical Psychologistは、国により制度が異なりますが、欧米では高い能力を背景に医師と同程度の発言権を持っています。
文部科学省のスクールカウンセラー派遣事業で派遣されるカウンセラーは臨床心理士、精神科医、児童生徒の心理に関して高度な知識を保有し、学校教育法第一条に規定する常勤の大学の学長・副学長・学部長・教授・准教授等でした(現在は、スクールカウンセラー等活用事業となり、上記の者に加えて、公認心理師と、都道府県又は指定都市が上記の者と同等以上の知識を有すると認めた者が、スクールカウンセラーとして選考されています)。
また、病院など医療機関で働いている心理職も公認心理士資格ができるまでは大半が臨床心理士でした。
取得にはいくつかの方法がありますが、主流は一定水準のカリキュラムを持つ臨床心理学専攻の大学院である「指定校」を修了して、臨床心理士試験を受けて資格を取得することです。
試験は、一次試験として選択方式筆記試験と論文記述式筆記試験があり、二次試験として口述面接試験があります。資格取得後も、5年おきに更新があり、資格更新のために継続的な研修が義務付けられています。
他に、Wikipediaの臨床心理士の項などもご参照ください。
公認心理師とは
公認心理師は、医療、保健、福祉、教育などの領域で、心理学の専門的知識及び技術をもって、相談、助言、援助をおこなう技術者を認定する国家資格で2018年に第1回の試験が行われました。
原則として大学から心理学を専攻し、大学院を修了することで受験資格が得られます。
試験内容は、「公認心理師として具有すべき知識及び技能」に関するマークシート方式の試験です。
業務や資格の性質は、臨床心理士と重なる部分が多い資格ですが、より医療システムに近い資格です。
他に、Wikipediaの公認心理師の項などもご参照ください。
公認心理師に類似の資格
これまで準公的な資格として通用してきた臨床心理士はもっとも近い資格で、各県にある臨床心理会は公認心理士会と名称を変更しているところもあり(東京都など)、実務的には一体として運用されている部分があります。
ほかに、ソーシャルワーク領域の国家資格である精神保健福祉士や、産業領域を中心とする産業カウンセラーなどがあります。
臨床心理士と公認心理師の違い
臨床心理士 | 公認心理師 | |
---|---|---|
資格種類 | 民間資格 | 国家資格 |
所轄官庁 | 設立は文部科学省がかかわる 現在の運営は内閣府(公益財団法人であるため) |
文部科学省・厚生労働省 |
主治医との関係 | 連携を図ることが求められる(倫理) | 指示を受ける義務(法定) |
更新制度 | 5年更新(その間に一定の研修を受けることが必要) | 一生有効 |
主な受験資格 | 臨床心理学を専攻する大学院(指定校)を修了 | ①大学および大学院で臨床心理学を修了 ②大学で心理学を習得後、実務経験2年 |
面接試験 | あり | なし |
経過措置 | 当初は心理学科卒なら無試験で授与された | 経過措置により、「現任者」は2022年まで学歴にかかわらず、現任者講習を受講すれば受験可能 |
- カウンセラーを選ぶ基準として、公認心理師もしくは臨床心理士の資格を確認するのは重要だと考えられますが、公認心理師試験の受験には、5年間の経過措置があったため、従来の臨床心理士的なスタンダードからすれば、適切ではない人も「現任者」として受験資格を得た事例もあるようですので、その点は注意が必要です(臨床心理士も資格設置当初は、心理学科卒であれば、専門が臨床心理学でなくても資格が与えられていました)。
- 今後は、国家資格であること、医療機関で働くためには公認心理師の方が有利になる可能性があること、維持コスト(更新がない)などから、新規の資格取得者は公認心理師にシフトしていく傾向があるようです。