カウンセリング

なぜ治るのか

各理論ごとに、人間をどう見るかの理論があり、そこからなぜ問題が発生するかが説明されます。 それらに基づくと、どうしたら変化させることができるか、その治療理論を導き出すことができます。

@はあと・くりにっくは、交流分析(再決断派)に立っていますので、その考えをごく大雑把に説明します。

「人」をどう見るか

人の心は大きく分けると、「親」「成人」「子ども」の3つの自我状態(心の状態)から成り立っていると考えます。 これらがどう機能するかによってその人がどう振る舞うかが決まります。

この3つの機能は12歳ぐらいで完成すると考えられています。 ということは、発達(成長のことです)の過程で、作られていくということが言えます。

この自我状態が形成される過程で、養育者とのやりとりやそれ以外の環境からさまざまな影響を受けます。 人間の子どもは他の動物のように生まれながらに自分で生きていく力がないわけですから、自分が無事大人になれるように、養育者に養育してもらう必要があります。

子どもは、どうしたら養育してもらえるのか、どうしたらもっと手厚いケアを受けられるのか、試行錯誤をします。 何かをしてもらったときに微笑んだらいいのか、何もしてもらえないときに怒ったらいいのか、それとも何をしても無駄だから我慢して待っているのが一番いいのか・・・などです。

それには、養育者の性格もありますが、子ども自身が何を求め、何を忌避するかというのも関係します。 怒られてもいいからもっとかまって欲しい子どももいるでしょうし、怒られることは耐えられないからかまってくれないことを我慢する子もいるでしょう。

こうした多くのトライを通じて子どもは、「こうすればいいんだ」「こうしよう」というのを「決断」します。 これは、子どもにとっては「生き延びる」ための意志決定であり、とても重みのあるものです。

問題はなぜ起こるか

大人になって回想すればもっといい方法があったかもしれませんが、大人ほど知能が発達していませんから、大人のように考えることはできません。 そういった限界の中での思考ですから、若干未熟な思考でも仕方ありません。

そうした決断は、たいていの場合「妥当」なので、子どもは大人になるまで養育してもらうことに成功します。 生き延びることを意図して決断し、それが実現したわけですから、それは非常に大きな成功体験です。

大人になると、環境は激変します。 もう、養育者に養育してもらわなくても、自分で生きていくことができるようになります。 だから、「決断」したときとは前提が異なってきます。 しかし、人間は成功体験の呪縛からなかなか抜け出せません。

現実が変わったのに、子どものころと同じように心を使っている、それが問題発生の基本的なメカニズムの一つです。

どうすれば解決するか

現実が変わったのに、子どものころと同じように心を使っている、それが問題発生のメカニズムであるので、解決策は「現在の現実に即した心の使い方に再構築する」です。

再決断派(再決断療法ともいいます)は、その「決断」は自分がしたものであるから、自分で決断し直す=「再決断」が可能であると考えています。

それを阻害するのが、生き延びることを意図して決断し、それが実現したという成功体験です。 これを脱学習*1することができれば再決断は可能になります。

と、ここまでは理性で対応できます。 古典派の交流分析の考えはこういう仕組みを理解できれば変わるというものです(これは認知療法・認知行動療法なども同じです)。

しかし通常、決断には情緒が大きく関与していますから、脱学習も理性だけではなかなかスムーズにいきません。 そこで情緒面でも対応する必要が出てきます。 再決断派では、その部分にゲシュタルト療法の考え方を取り入れ、情緒面からも変化を支援し、達成した変化を定着するよう働きかけます。

*1 心理用語。学習したことを解除する、という意味。たとえば、虫が嫌いだとして、虫が嫌いと学習したことを解除すると虫が平気になる。